2007年04月12日

少年検閲官/北山猛邦 ★★★★☆


何人も書物の類を所有してはならない。
もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。
そんな世界で育った英国人少年・クリスは、「ミステリ」という書物を探しに日本へやってきた。
小さな町に辿り着いたクリスは、扉や部屋内に赤い十字架のような印が残されている家々を発見する。
そして、町には森に迷い込んだ人々は首なし死体になるという伝説まであった。
それは、なんと『探偵』の仕業らしい・・・?


<どうせすべて妄想だ。あまりにも狂気じみている。
  けれど、何処から何処までが非現実だ?>


再読すると全く違う画が浮かび上がるというこのトリックは大好き。
素直に驚いてしまいました。
そりゃ、この世界が舞台でないと無理だわ。美しい!

『アリス〜』と同じく、今回も殺人の「動機」はとても変わっています。
最終的に、グロ描写も必然だったと判明するので、後に残らなくて助かるのです。
これが無駄に気持ち悪く感じる誉田作品との違いですね。

ミステリのない世界で犯罪を行う方法、そのヒントとなる「ガジェット」というアイテム。
何だかゲームっぽいですし、詰めの甘さも感じますが、こういう遊び心にはワクワクさせられます。
ただ、肝心の事件に集中できなくて、どういう展開になるのかさっぱりよめない。
何もかもが謎のまま、ラストまで引っ張ってこられるのです。
読ませる力はすごいですが、終盤までのモヤモヤ感が不満かな。
最後まで読んで、やっと作品の魅力に気付いた、という感じです。

もし続編が出るなら、さらに楽しめそう。

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ときわ姫 > めみさんはかなり満足されたようですね。良かった!私はエノが気になっています。続編でエノのことをもっと書いてもらえたら嬉しいのですが。出るかなあ。 (2007/04/12 21:28)
めみ > ときわ姫さん、これは読んでおいて良かった!トリックがツボ直撃でしたよ。ありがとうございます〜。今回は世界の仕組みにページをとりすぎて、エノの背景が見えませんでしたね。これ一冊では消化不良ですよ〜。ぜひ続けてもらわないと! (2007/04/13 15:51)
posted by めみ at 22:49| 北山猛邦

2007年03月30日

『アリス・ミラー城』殺人事件/北山猛邦 ★★★☆☆


ルイス・キャロルの作品にちなんだ不可解な城に探偵たちが集められた。
ある者は密室状況下、巨大な鏡の上で顔を溶かされた死体となり、ある者は合わせ鏡の部屋で殺され、犯人は目撃者の眼前で消失する。
館内のチェス盤からは殺人の度に駒が1つずつなくなって・・・。
不可能犯罪に込められた驚くべき思念とは!(裏表紙より)


<くそっ。てめえは最初に殺されろ>
<君は最後から三番目辺りのもっとも目立たない殺され方をするといいね>


「著者のことば」が、麻耶さんっぽくて少しワクワク。
こんなド直球のミステリを読んだのっていつ以来だろう?
気合いを入れてじっくり取り組んでみました。

文章はとても読みやすく、芸術論も頭にすんなりと入ってきます。
キャラの描き分けもバッチリで、混乱の心配もありませんでした。
この作家さんとは相性が良いかも。
これより前の作品があまり良い評価を得てないので、そちらを読むことはないだろうけど。

次々と殺されていく探偵たち。
自分が犯人ではないということは、残りの誰かが・・・!

複数の視点で話が進むので、こちらも犯人の見当がつきません。
疑心暗鬼に陥り、パニックになる人物もいれば、冷静に推理を続ける人物もいます。
作中に、物理トリックの脆弱性やらリアリティの有無やらを議論するシーンがあるのですが、どうして著者自らハードルを高くするのか不思議。
まぁ、小粒でも私好みのトリックでしたが、すっごく期待しちゃいました。

破滅型のストーリーなのですが、ラストの仕掛けで後味の悪さが軽減されるようになっています。
私は最初に違和感があったのに、その後いつの間にか騙されて、最後に「やっぱりかい!」と、完全に翻弄されてしまいました。
この仕掛けは前例があるので別として、そのミスリードがお見事。
再読すると、明らかに2箇所「巧い!」と思うシーンがありました。完敗。
でも、怒り出す読者がいるのも納得ですね。

『そして誰もいなくなった』と『鏡の国のアリス』がモチーフなのですが、これが読後に違った効果をもたらします。
無意味な小道具や設定が気になったので評価は星3つですが、なかなか読み応えがあり、楽しめました。
posted by めみ at 22:46| 北山猛邦