2007年11月12日

秋の牢獄/恒川光太郎 ★★★★☆


十一月七日、水曜日。
女子大生の藍は、秋のその一日を何度も繰り返している。
毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。
朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。
彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。
この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか・・・。(帯より)


<今日は変だ。私以外の何かが間違っている>

「秋の牢獄」「神家没落」「幻は夜に成長する」の3編が収録。
サプライズとしては『夜市』以上のものは無いですが、とても濃いです。
それぞれの世界に、どっぷり浸ることができます。

「秋の牢獄」
同じ一日を繰り返すという、おなじみのテーマ。
決して、その日に起こる事故や事件を止めるためなどではなく、目的や理由のないまま、不条理にそのループへと取り込まれてしまった主人公。
しばらくすると、同じ境遇の仲間も見つかり、「今日が嵐や大雨でなくて良かった」「二日酔いで目覚めた日じゃなくて良かった」など会話しながら、共に十一月七日を過ごすのですが・・・。
オチらしいオチはありませんが、ラスト一行にハッとさせられました。

「神家没落」
ふと迷い込んだ家から出られなくなってしまった主人公。
外に出るには、誰かを身代わりにしなければいけない。
「マヨヒガ」をモチーフにしたということですが、私は『世にも奇妙な物語』の中でも一番好きな「13番目の客」を思い出しました。
中盤からの展開は、全く想像がつきませんでした。
この本の中で、一番好きです。

「幻は夜に成長する」
とても哀しいストーリー。
不思議な能力を持った少女の波乱の人生が、淡々と描かれています。
少女がビルの屋上で恋人に見せる幻覚は圧巻。
ラストはひたすら凄まじく、虚無感が漂います。

webKADOKAWAのサイトで恒川さんの動画を拝見。
イメージと違いましたが、笑顔が良いです。
真相に触れています。
posted by めみ at 13:52| Comment(2) | 恒川光太郎

2006年12月14日

雷の季節の終わりに/恒川光太郎 ★★★★☆


現世から隠れて存在する小さな町・穏(おん)で暮らす少年・賢也。
彼と一緒に暮らしていた姉は、ある年の雷の季節に行方不明になってしまう。
姉の失踪と同時に「風わいわい」という物の怪に取り憑かれてしまった賢也は、町のある秘密を知り、追われる身となる。
穏を出て、「風わいわい」と共に他所の町を目指す賢也に待ち受けていたものは・・・?


<雷の季節にはよく人が消える。それはもう仕方がないんだ。>

長編なので『夜市』と比べるとモッサリした印象はありますが、私は序盤からこの物語世界に惹き付けられました。
幽霊が出るという噂の墓町、穏と外の町との境目で見張りをする闇番、外から取引にやってくる商人、そして鳥の姿の物の怪「風わいわい」。
これらの魅力的な設定にワクワクし通しです。
もう少し穏の中での物語を楽しみたかったのですが、早い段階で賢也が出て行ってしまうので名残惜しい気持ちになりました。

何を書いてもネタバレに思えるほど、私は全く展開がよめませんでした。
終盤まで頭の中は「?」で一杯。
特に中盤、全く違う環境で暮らす茜という少女の登場が最大の謎で、それまでの雰囲気が一変してしまい戸惑いました。
でも、その謎と賢也の世界とのつなげ方が巧い!
予想外のサプライズで得した気分になりました。

穏の設定は恩田作品っぽいのですが、こちらの方が詰めが甘いかな。
でも、抜群のリーダビリティと意外な展開、そしてラストの物足りなさまで似ているような印象を受けました。
途中から、ストーリーが失速するのですよね。
賢也の姉が消えた理由や結末も、何だか取ってつけたような真相ですし、ある人物の正体が最後まで明らかにならないのもスッキリしません。

後から考えると細かいことが気になりますが、読んでいる間は夢中でした。
この作家さんは追いかけます。

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ときわ姫 > 図書館に予約中です。めみさんはたくさん不満を書いているのに評価が4ですね。一応押さえておこうと予約したのですが、来るのが楽しみになりました。 (2006/12/14 22:15)
あしか > 夜市の人ですよね。内容見ずに予約させていただきます。読んだらまたお邪魔します。楽しみだ! (2006/12/14 23:27)
たろ > 面白そうですね。恩田さんのテイストですか。あの不思議な世界はいいですね。最初の10作あまりは楽しく読んでいたのですが、終盤の失速にふっと嫌気がさして離れてしまいました。そろそろ戻ってもいいころかもしれません。その前にこの作品を読むとして、さらにその前に『夜市』を読んでみようと思います。 (2006/12/15 12:30)
めみ > ときわ姫さん、前半と後半で雰囲気がガラッと変わるので、そこに違和感を持つかどうかが評価の分かれ目だと思います。私は読後に色々と気になりましたが、読書中は本当にワクワクしました。ときわ姫さんも『夜市』より楽しめると良いですね☆ (2006/12/15 18:17)
めみ > あしかさん、この作品は『風の古道』を広げたような世界でした。短編ほどの衝撃はないのですが、なかなかのものでしたよ〜。ご感想、お待ちしております☆ (2006/12/15 18:19)
めみ > たろさん、恩田作品はその過程が面白すぎますし、きっと結末に拘らずに自由に楽しんで描いているんだろうなぁと思うようになりました。それが持ち味のような。私がミステリ以外でも読んでみようと思う数少ない作家さんです。ぜひ、また復活を☆そして、『夜市』のオチは斬新ですよ〜。オススメです。ご感想、お待ちしております☆ (2006/12/15 18:24)
posted by めみ at 22:13| 恒川光太郎