2006年12月04日

夏の魔法/北國浩二 ★★★★☆


9年前に早老症の一種である「ケルトナー症候群」と診断された夏希。
22歳の現在、外見はすっかり老婆となり、末期がんと診断された。
これが最後の夏になるかもしれない。
それなら、中学の夏、初恋の男の子と過ごしたあの懐かしい島で死期を迎えたい。
そこで偶然再会した初恋の相手・ヒロ。
彼は目の前の相手が本人だと気づかないまま、彼女に夏希がどれほど大切な存在だったかを語る。
夏希は彼のその記憶を壊したくないため、自分の正体を明かせない。
そして、ヒロの隣には活発で明るい美女・沙耶がいた・・・。


<コレガワタシ、コレガワタシ、コレガワタシ・・・>

すごい作品です。

島の美しさやイルカとのふれ合い、その日々の中で何度も胸によぎる嫉妬や羨望。
かつての自分が持っていた若さ、明るさ、美しさ。
10年かけて諦めたものを、まざまざと見せつけられる辛さ。
この夏希の心理描写が抜群で、つい感情移入してしまいます。
とても苦しいのに、読むのをやめられない。
グイグイ引っ張られてしまう。すごい。

真相はある程度予想していたのですが、全く違う方向からガツンときました。
仕方のないこととはいえ、とても残酷な結末です。

ほぼ満足なのですが、おそらく著者の狙いとは別なところで、不快に感じる点が多かったのが残念。
評価は星4.5です。
これは、再読すると本当にキツイ。

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ときわ姫 > 実は、こんな病気は聞いたことがない、私の知ってる早老症と違うというのが気になってしまって物語に入り込めないまま終わってしまいました。最後にこの病気は創作ですと書いてあって、それを知ってたら読み方が違ったのにと凄く残念でした。
著者のねらいとは違うかもしれませんが、父親というのはどうして的をはずすことをやってしまうのか、そこが一番リアルに感じたところです。 (2006/12/05 15:49)
たろ > すさまじく残酷な設定ですね。なぜこんな物語を書こうと思ったのかに、興味があります。いろいろ考えながら読んで、最後にガツンとやられてみようと思います。 (2006/12/06 12:26)
めみ > ときわ姫さん、読後に一番強く残った感情は『惨めさ』でした。この真相は、私が夏希なら耐えられないし、絶対許せないと思います。でも現実では、当然考えるべきことなのですよね。その方法に配慮が足りなかっただけで。それまでがまるで童話の世界にいる気分だったので、このリアルな結末が大ショックでした。しかし、再読すると、沙耶や良介の言動がとても無神経に感じるのは私だけでしょうか・・・。
ときわ姫さんのレスで、ケルトナー症候群が架空の病気だと知りました。恥ずかしい!巻末ではなく、最初に提示してもらわないと困りますね。この用語、覚えちゃいましたよ・・・。 (2006/12/06 17:01)
めみ > たろさん、この設定だけで大体ストーリーの想像がつくと思うのですが、ラストに近づくにつれて、もう本当にやってられない気分になります。善意って難しい・・・。この作品はミステリとはいえませんが、夏希の心理面での伏線が巧妙で、言葉の使い方や表現方法にも胸がギュウッとなりました。ぜひ、たろさんにも読んで頂きたいです。ご感想お待ちしてます☆ (2006/12/06 17:03)

たろ > <ネタバレです>【こっちにも書いてたりして・・・沙耶や良介の言動は無神経ですね。たぶん、彼らの社会経験の不足を反映しているのだと思います。夏希のような人に、最後のすてきな夏をプレゼントするなど、普通の人の手に負える仕事ではありません。気をつかいすぎてばれたらえらいことです。良介はありのままの自分で接しようとすることで、沙耶は作家とファンという役割関係を軸にすることで、困難な課題に対処しようとしたのでしょう。さて、ヒロです。彼の言動は危ういなと思いながら読んでいました。彼の心中の善意と恋愛感情のバランスはどうだったのか。作品の構造上明らかにできないことなので、なおさら気になりました。 】(2007/02/07 16:39)
めみ > <ネタバレです。>たろさん、【私は中盤、沙耶が夏季のTシャツを無理やり脱がしたシーンで「ええっ!?」と驚きました。これはもうデリカシーの問題で、一般の老人に対してもできないだろうと。プラス、良介の失礼な発言でムカッとしていたので、終盤、夏季が真相を知った後、「みんな私のためを想って頑張ってくれてたのに・・・」という気分にはなれませんでした。「知っててあの言動かい!」と。ああ〜根性悪ですね私。荷が重すぎたのだとたろさんに教えてもらって、やっと気付きました。私が彼らの立場だと、何をしても傷つけてしまいそうだからと気を遣うでしょう。でもそれだと、素敵な夏を経験させてあげることができない。これは本当に難しい役どころです・・・反省。
ヒロの本心はどうであれ、私が夏季なら真相を知った以上、恋愛感情だと説明されても絶対に信じません。「嘘やん。同情やん。だって彼女おったやん!!」とグチグチ繰り返す姿が容易に想像できます。我の強さバレバレ。私にとって、(ミステリ以外読まないせいか)ここまで登場人物に感情移入してしまう作品はすこぶる珍しいです。その点でも貴重ですね。
】(2007/02/08 15:40)
posted by めみ at 22:11| 北國浩二