2005年09月25日

繭の夏/佐々木俊介 ★★★★☆


育ての親である伯父夫婦の事業の行き詰まりにより、カナリア荘で2人で暮らすことになった姉弟、祥子と敬太郎。
引越し当日、部屋の掃除をしていた祥子は、天井裏から古ぼけた人形を見つける。
その人形には手紙が入っていて、その内容に姉弟は驚く。
<ゆきちゃんはじさつしたんじゃない。まおうのばつでしんだんだ>
その部屋は以前、伯父の娘・咲江が使っていたのだが、彼女は8年前に自殺していた。
人形が咲江の持ち物であると見当をつけた彼らは、咲江の自殺と「ゆきちゃん」なる人物の謎を追っていくのだが・・・。


<過去に未解決の殺人事件が存在したかもしれない。あたしたちはその謎を解くヒントを手にしているのかもしれない・・・。
ねえ、新しい生活のスタートに難事件を解決なんて、胸がドキドキするとは思わないの?>


第六回鮎川哲也賞、佳作受賞作品。

「スリーピング・マーダー」ものです。
ずっと昔に起こったはずの殺人事件を、時間を遡って推理していく、「回想の殺人」のこと。

8年前に「自殺」で片付けられた2人の死に疑いをもち、夏休みオンリーの探偵となった、祥子と敬太郎。
この2人が交互に語り手となるので、とても読みやすいし、退屈しません。
「模像〜」では本格風でしたが、今回はとても優しい文体です。

感想は、面白い!の一言。
謎がどれも私好みで、終始、ワクワクしながら読みました。
真相はそんな驚くモノではないですが。
でも、「ああ、だからあのときの手紙で、あんなこと書いてあったんだ〜」など、納得する箇所がいくつも。
「そんなご都合主義な」とツッコミたくなる部分もあるのですが、ちゃんと伏線があるのですよね。
読み返すと、とても緻密な計算がされていることがわかります。感心するほど。

動機は一般的に考えると弱いですが、伏線がある故、この作品の中では許せました。
なにより、トリックとそれに付随する謎の解明のくだりが巧い!
関係者が協力的すぎることや、通常、初めに確認すべきことを放っておく彼らの行動など、不自然な点もいくつかあるのですが。
天井裏に人形を隠した理由が判明したとき、とても切なくなりました。

文庫版は、若竹七海さんが素晴らしい解説をしているということで、そちらも読みたいなぁ。
内容に触れています。
posted by めみ at 15:28| 佐々木俊介

2005年09月23日

模像殺人事件/佐々木俊介 ★★★★☆



人里離れた山奥にある木乃家は、周囲から忌避されている一族だった
ある日、8年間音信不通だった長男、秋人が2人帰ってくる。
大怪我を負ったというその顔は包帯で覆われており、どちらも「自分が秋人だ」と主張し譲らない。
そして、唯一の通行手段である橋が爆破され、陸の孤島となった館で殺人事件が起こる。


まず、1ページ目を捲ったときに感じたこと。
「文字が大きい!」でした(笑)。
しかし、文体がまさしく横溝風で、その雰囲気は抜群です。

ネットの評判もすこぶる良いし、私自身、久しぶりの本格とあって、「絶対、真相を見破る!」と意気込んでの挑戦でした。
なにしろ、「誰が殺したか?いかに殺したか?」は問題じゃないんですよ。
・・・逆に返せば、犯人と殺人方法には、目新しい手法は使っていませんよ、との大胆発言にもとれたりするのですが。
内容に触れています。
posted by めみ at 15:23| 佐々木俊介