 育ての親である伯父夫婦の事業の行き詰まりにより、カナリア荘で2人で暮らすことになった姉弟、祥子と敬太郎。 引越し当日、部屋の掃除をしていた祥子は、天井裏から古ぼけた人形を見つける。 その人形には手紙が入っていて、その内容に姉弟は驚く。 <ゆきちゃんはじさつしたんじゃない。まおうのばつでしんだんだ> その部屋は以前、伯父の娘・咲江が使っていたのだが、彼女は8年前に自殺していた。 人形が咲江の持ち物であると見当をつけた彼らは、咲江の自殺と「ゆきちゃん」なる人物の謎を追っていくのだが・・・。
<過去に未解決の殺人事件が存在したかもしれない。あたしたちはその謎を解くヒントを手にしているのかもしれない・・・。 ねえ、新しい生活のスタートに難事件を解決なんて、胸がドキドキするとは思わないの?>
第六回鮎川哲也賞、佳作受賞作品。
「スリーピング・マーダー」ものです。 ずっと昔に起こったはずの殺人事件を、時間を遡って推理していく、「回想の殺人」のこと。
8年前に「自殺」で片付けられた2人の死に疑いをもち、夏休みオンリーの探偵となった、祥子と敬太郎。 この2人が交互に語り手となるので、とても読みやすいし、退屈しません。 「模像〜」では本格風でしたが、今回はとても優しい文体です。
感想は、面白い!の一言。 謎がどれも私好みで、終始、ワクワクしながら読みました。 真相はそんな驚くモノではないですが。 でも、「ああ、だからあのときの手紙で、あんなこと書いてあったんだ〜」など、納得する箇所がいくつも。 「そんなご都合主義な」とツッコミたくなる部分もあるのですが、ちゃんと伏線があるのですよね。 読み返すと、とても緻密な計算がされていることがわかります。感心するほど。
動機は一般的に考えると弱いですが、伏線がある故、この作品の中では許せました。 なにより、トリックとそれに付随する謎の解明のくだりが巧い! 関係者が協力的すぎることや、通常、初めに確認すべきことを放っておく彼らの行動など、不自然な点もいくつかあるのですが。 天井裏に人形を隠した理由が判明したとき、とても切なくなりました。
文庫版は、若竹七海さんが素晴らしい解説をしているということで、そちらも読みたいなぁ。
| |