2008年09月03日

夢は枯れ野をかけめぐる/西澤保彦 ★★★★☆


勤務先を早期退職し、ひとり静かに暮らす中年男・羽村祐太。
だが、彼のもとになぜか、数々の不思議な事件の相談が持ち込まれ・・・。
ミステリ界の雄! 西澤保彦ワールド全開!! (amazonより)


<あなたにも見据えて欲しいのよ、この現実を>

「高齢者の介護問題」を中心とした6つの短編集です。
ミステリではない・・・かな。

主人公・羽村は穏やかなキャラだし、のほほんとした雰囲気なので日常の謎系かと軽く読み始めたら、非常に重いテーマに打ちのめされてしまいました。
作中で浮き彫りにされる状況は決して目新しいものではありません。
でも、自分も決して他人事ではないという意識があるので、どっぷり感情移入してしまい、改めて考えさせられました。
主婦や娘の心理描写が抜群に巧いのですよね。

最終章ではあんまりな展開に涙がこぼれそうに。
もの悲しくもささやかな救いが感じられたラストでした。
posted by めみ at 17:15| Comment(0) | 西澤保彦

2008年09月02日

絡新婦の理/京極夏彦 ★★★★☆


理に巣喰うは最強の敵・・・。京極堂、桜の森に佇つ。
当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな・・・2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。
房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。(amazonより)


<貴方はそうして世界を勝ち取るの?>

これは良い!
今回も800ページの分厚さだけれど、女学生のパートがとても読みやすく、リーダビリティの高さは『魍魎の匣』レベル。
お寺や宗教も絡んでこないため、薀蓄も少なめなのですよね。
そして、しつこいほど意表を突く展開は驚きの連続でした。

「狂気」がベースとなっているので少し疲れますが、なぜか女性にモテる木場修や、榎さんの大立ち回りなど、見所も満載。
作中でツッコまれている通り、見事な「ご都合主義」の真相なんだけれど、そんなことはどうでも良いのです。
めちゃめちゃ面白かったのです。

ラスト一行にため息。美しい!
真相に触れています。
posted by めみ at 13:39| Comment(2) | 京極夏彦

2008年08月28日

鬼蟻村マジック/二階堂黎人 ★☆☆☆☆


宴席の最中だった。
突然部屋の中に入ってきたのは「鬼」・・・祭で使う鬼の面をつけ蓑をまとった「鬼」だった。
鬼はいきなり客に斬りかかり、部屋を飛び出していった。
そして別の部屋に入りこんだところで、幻のように消え去ったのだった。
それから七十年、「鬼」はふたたび現れ、人々を惨禍に巻き込んでいく。
畳みかける不可能犯罪に水乃サトルが挑む。書き下ろし長編本格推理。(本書あらすじより)


<ほら、あれが鬼だよ>

二階堂作品は『私が捜した少年』と『カーの復讐』が既読。
水乃サトルシリーズはこれが初めてですが、あらすじが面白そうだったので読んでみることにしました。

でも残念なことに、横溝風でとても好みの事件なのに探偵役が気に入らないという、『首鳴き鬼の島』を思い出させる作品でした。
序盤の水乃サトルと依頼人の脱力系の会話まで同じ印象。
でも、ミステリとしては『首鳴き〜』の方が上でした。

私は基本的に「連続殺人を止められない探偵」は、ミステリの「お約束」だと思っているので滅多に非難はしないのだけど、今回は水乃サトルの無能さに終始イライラし通し。
しかも真相解明のじれったさといったらもう・・・!
ストーリー展開が遅い訳ではないのに、ものすごくストレスが溜まるのですよ。
驚いたのは、最近のミステリとは思えないくらい全く新鮮味が感じられなかったこと。
2時間サスペンスでも、もう少しサプライズが用意されてると思うんだけど。

ファンなら楽しめるのでしょうが、私には水乃サトルの魅力とされる要素がことごとく受け入れられなくて、ラスト一行までドン引きでした。ほんと残念。
posted by めみ at 13:19| Comment(0) | 二階堂黎人

2008年08月27日

野球の国のアリス/北村薫 ★★★☆☆


野球が大好きな少女アリス。
彼女は、ただ野球を見て応援するだけではなく、少年野球チーム「ジャガーズ」の頼れるピッチャー、つまりエースだった。
桜の花が満開となったある日のこと。
半年前、野球の物語を書くために「ジャガーズ」を取材しに来た小説家が、アリスに偶然再会する。
アリスは小学校卒業と同時に野球をやめてしまったようだ。
しかしアリスは、顔を輝かせながら、不思議な話を語りはじめた。「作日までわたし、おかしなところで投げていたんですよ。」(「BOOK」データベースより)


<・・・投げられるから、しあわせ>

ひょんなことから、鏡の世界へ入り込んでしまったアリス。
そこでは、新聞の字が逆だったり、右利きが左利きになっちゃったりするんだけど、アリスにとって一番の問題は、負けたチーム同士で試合をし、テレビ中継でエラーやミスを笑いものにするという悪趣味なイベントが行われていること。
野球を心から愛するアリスは立ち上がるのだが・・・。

アリスがとてもしっかりした女の子なんですよね。
ある失敗をするんですが、落ち込むよりも周りに迷惑をかけたことを反省したり、自分が逃げ出したらもう1人のアリスに迷惑がかかるのを気にしたり・・・。
お母さんも良い味出してるんですよね。
アリスとの接し方は、ほっこりと温かい気持ちになります。

アリスの成長や友情や恋愛(?)を絡めたストーリーはもちろん、読後感も爽やかでなかなか楽しめました。
セクハラ五堂の「ほれろよ」に、ニヤリ。
posted by めみ at 00:01| Comment(2) | ミステリーランド

2008年08月26日

誰が疑問符を付けたか?/太田忠司 ★★★☆☆


平凡な住宅地で簡単に人は人を殺す。
不可解な殺害現場を残して・・・。
女優以上に美人ながら“愛知県警の鉄の女”と畏れられる景子警部補と、新進イラストレーターの新太郎の京堂夫妻。
婦唱夫随で、8つの疑問符をあざやかに解く!(amazonより)



<ドンピシャよ。さすがは新太郎君>

『ミステリなふたり』の続編です。
前作では隙あらば新太郎を押し倒していた景子さん、今回は控えめでした。
相変わらず、新太郎の主夫っぷりにはウットリしてしまいます。

なぜ死体はぬいぐるみと一緒に吊るされていたのか?
なぜ死体の上に刺身が置かれていたのか?
真面目な男性会社員はなぜ女装した死体で発見されたのか?

奇妙な8つの謎。全てのタイトルに疑問符が付いています。
どれも謎はとても面白いのですが・・・真相がパッとしないのですよね。
それでも、景子と新太郎のキャラが好きなのでなかなか楽しめました。
謎が魅力的だったのは『彼女は誰を殺したか?』
『出勤当時の服装は?』『熊犬はなにを見たか?』は読後感が良かったです。
posted by めみ at 17:56| Comment(0) | 太田忠司